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実は『日暮らし』と同時進行で読んでました。
文庫なので通勤の電車の中と仕事前の空いている時に読めばいいやともって歩いていたんですが…失敗した!
内容が悪いとかではなく、むしろ良すぎて外で読むのを憚られるのです。(え)
うっかり電車の中やら店のバックルームで泣いてしまうかと思った…危ないあぶない!
最近はどうも涙腺が弱いのか、ちょっとしたことでもすぐ泣けてきてしまうのが恥ずかしい…orz
『本所深川ふしぎ草紙』 宮部みゆき
タイトルの通り、本所の七不思議を題材にした七つの短編からなる本です。
(「本所の七不思議って何?」と思われた方はココを見に行くとよろしかろう、大体のことが判ります。→http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E6%9C%AC%E6%89%80%E4%B8%83%E4%B8%8D%E6%80%9D%E8%AD%B0&oldid=6824488)
『初ものがたり』の茂七が出てくる連作シリーズの一作目(?)のですね。
ただ『ぼんくら』『日暮らし』のように、『初ものがたり』よりも先にこっちを読まなければいけない必然性は特にないかと思われます。
『初ものがたり』は茂七とその周辺の人に、『本所…』は事件の当事者により重きを置いた視点で書かれているので、『初ものがたり』を先に読んでしまった私はむしろの方が茂七という人物に思い入れが出来てよかったように思います。
(但し時系列的には『本所…』の方が先です)
七不思議をモチーフに…といっても怪談的なお話のつくりではなく、日常の中に青天の霹靂のように訪れた事件とそれに関わった人たちの心情を細かに描き出した作品でしょう。
総てのお話に共通する感想を一言で表すなら「せつない」という言葉が一番しっくりくるように思います。
ただ、事件もそれなり凄惨だし当事者にとっては不幸な出来事ですが、それだけでなく残された人たちの中に生きている人間の強さのようなものを見出す時、それを喜びつつそれを身につけなければならなかった悲劇を思って、手放しに「よかった」とも思えず「せつなさ」に目頭が熱くなる…そんなお話です。
(そんな訳で外でこの本を読むのを断念した私です…)
どれもこれもいいお話ですが、個人的にはほのかすぎる恋情がうっすら漂う『片葉の芦』と『送り提灯』が特に好きですね。
そういえば宮部さんは『送り提灯』の文中で「狐は人を化かすとき、その人の手を引いて、自分が前に立って歩くんだ。だから危ないところには連れていかない。だけど、狸は馬鹿だから、化かす人の後ろに回って背中を押していく。どこへ連れていかれるかわからないよ」と書いてらしたけど、wikiでは全く逆のことがあって、一体どっちが本当のことなんだろうかと。
ネットで探ってみてもホントのところはよく判らなかったんですが、私は宮部さんの説を採りたいなぁv
”動物”としてはどっちも可愛くて好きなのですが、”もののけ”ないしそれに近い存在として…となると、理由は色々あれどどうしても狐に肩入れしたくなってしまうのですよ。
ともあれ、今回も文句なしに★★★★★で。 (どうも私は宮部作品が無条件に好きすぎる)