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書店員のもろもろつぶやきやら、つたないブックレビューやらがのっへり更新されたりされなかったり…
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 実を言うと私は昔っから非常に怖がりで、ホラーやらスプラッタに分類される映画なんぞは絶対に観たくないタイプなのです。
 それが何をどう間違ったのか、今では怪異だの悪魔だのがてんこ盛りの小説を読んでみたり、ゲームもそういうのを好んでプレイするようになってしまいました。(苦笑)
 別に私の残虐性が増したとかそういう訳ではなく、元々人智の及ばぬものに畏敬の念を懐いていたというか、己の理解を超えるものに畏れつつも慕っていたのが、歳を取るにつれ『恐怖』より『興味』の方が上回ってしまった…というところでしょうか。
 もしかしたら歳くったせいで怖がる神経が磨耗してしまったのかもしれませんが。

 例えるなら『ゾンビ』『13日の金曜日』『SAW』は絶対に観たくないが、『オーメン』『ヴィレッジ』は怖がりつつも好きvっていう感じ?
 傍から見たら「何が違うのやら?」と首を捻られる程度の差かもしれませんが。(笑)
 
 でも今は怪異よりも人間の方がよっぽど怖いかもしれませんね。


 『あやし』 宮部みゆき

 最初の書き出しから「アレ?これはいつもと何だか違う…」と思わせる程、普段の宮部ワールドとは一線を画する雰囲気が漂っているのは、やはりこの作品がただの時代小説ではなく、和製ホラーとしての一面を持っているせいかもしれません。
 ホラーと言っても大仰な怖がらせの演出など一切なく、ただそれでいてじわじわと毛穴の一つ一つから染み込む様な恐怖感がひしひしと伝わってくるのです。
 それは人外のものの未知の恐怖であったり、人の心に巣食うものの恐ろしさであったり。
 普段の宮部みゆきの時代小説にある『切なさの中にある優しさ』のようなものより、ただそこにある事実を淡々と語られる『自分にはどうしようもない、もどかしさ』が印象に強い分、またそこに描かれている人々に対する哀憐のようなものが胸に迫ってくるようでした。
 
 私は読み終わってからもずっとその"物語"のことを考えて泣いてしまうような作品を自分の中の『傑作』として位置づけているのですが、今回収録されている中の『梅の雨降る』は今の自分の心情も相まって非常に印象深い物語となりました。
 (これを書きながらちらとページを繰っただけでまた咽喉の奥に塊を飲んだような圧迫が…)
 この話の結末を知っている私はきっと湯島ではおみくじは引けない…いや引いてはいけないだろうな。
 
 怖いこわいと散々言いましたが、全編怖いだけの話ではなく中にはまんが日本昔話に出てきそうなこわい中にもかわいらしいような話もあってみたり、『ぼんくら』にも出てきた政五郎親分が顔を覗かせていてほっとした気分になるような話もあってみたりと、宮部ファンなら「これは!」と思うような嬉しい作りですv

 最初の文体の違和感も払拭するような傑作ぞろいで★★★★★!

 
 私の恐怖の演出で印象に残って「これは秀逸だった!」と思うものの中に、巨匠ヒッチコックの間の取り方があるわけですが、この本はそれに通じるような『間』があるように感じました。
 あぁ、何だか『ヒッチコック劇場』が観たくなってきた~!
 (年齢がバレますよ?)

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